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Date: Fri, 18 Mar 2011 16:37:09 +0900
From: TAKANASHI Naohiro <naohiro.takanashi@emp.u-tokyo.ac.jp>
Subject: [scsj:00017] Re: 東北関東大地震と科学コミュニケーション
To: member@scicomsociety.jp
Message-Id: <4D830BA5.2000205@emp.u-tokyo.ac.jp>
X-Mail-Count: 00017

みなさま、

高梨@東大EMPです。

非常時における科学コミュニケーションを俯瞰して、
どのような視点、枠組みから課題を捉えるべきか、
考えている事をメモしたものをお送りします。

中途半端なものを公開することはどうかな?とも思ったのですが、
少しでもお役に立つところがあればと思い、お送りする次第です。

■情報の出し手に関わる課題

・問題が複雑で、ひとりの専門家では全体を俯瞰できず、
  社会が必要としている情報を必ずしも適切に出せない

・時々刻々と変化する事態に、専門家によって十分に
  吟味された情報を出すという行為が追いつかない

・リスクテイクした人間に対するフォローの体制はあるか
 どのようなフォローが可能か

真に当事者である専門家から責任を伴った情報が出されるまでには
どうしても時間がかかるため、それまでのつなぎとして、準専門家の
立場からの情報は有意義。しかし、それは緊急時の対応であり、
専門家による責任を伴った情報へとスムーズにつなげていく必要が
あるのではないか。

俯瞰的な視点から出さなくてはいけない情報は、行政以外だと、
誰が担い手になれるのか。メディアにその役割が担えるか?

■情報の流通体制に関わる課題

・受け手が、どのような手段で情報を入手しているのかが不明で、
 必要としている情報がきちんと受け手に届いているかわからない。

・情報に対してどのような信頼度を置いているかが不明で、
 間違いが許されない情報が必要なのか、精度は少し悪くても
 問題がない情報であるのか、判断が付いていない。

新聞、TV、ラジオ、ネット、口コミ、さまざまな手段で情報を
得ていることと想像するが、その比率や信頼度は日々変化しており、
状況に応じながら情報の流通設計をする人間が必要ではないか。

■情報の受け手に関わる課題

・誤った情報かどうかを判断するすべを持たない

・どのような情報を必要としているのかが、
 情報を出せる専門家まで伝わっていない

情報の吟味の仕方については、科学コミュニケータが協力可能。
市民がどのような情報を必要としているのかについては、
科学コミュニケーション活動の枠組みで拾い集めることが可能。

-- 
Naohiro Takanashi, Ph.D.

Project Assistant Professor (Executive Management Program)
Institute of Industrial Science, The University of Tokyo
naohiro.takanashi@emp.u-tokyo.ac.jp
https://www.emp.u-tokyo.ac.jp/