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Date: Fri, 1 Apr 2011 17:32:45 +0900
From: Miwa Kuri <kuri-m@mail.sci.tohoku.ac.jp>
Subject: [scsj:00027] 仙台より近況報告
To: member@scicomsociety.jp
Message-Id: <p06001015c9bb314c9699@[172.30.4.60]>
In-Reply-To: <OF0ABFEB9C.32219D3E-ON49257865.0028B5C2-49257865.0028E800@sial.com>
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横山様、立花様、みなさま

東北大学の久利です。

横山さん、お見舞いありがとうございます。
ただ、今冬の方々も多くの問題を抱えていること伺っております。
みなさまにも、お見舞い申し上げます。

頂いた提言に直接お答えできる自身がないですが、
まずは雑感から述べさせていただきます。

長神さんの文章は一読致しましたが、その後の議論については把握致しておりません。
議論をまきおこしたであろうことは想像するしかありません。

今、私が言えることは、
「地震災害と、津波災害と、原発事故はきっちりわけて整理すべきであろう」です。

地震災害については、想定以上で大きな被害が有りましたが、
それでも良く備えられていたとの印象をもっています。
(一方で、3日我慢すれば支援がやってくると周囲の方は信じていましたが、
この広域な災害で、3日では難しいだろうというのが、避難所での私の本心でした。)
私の予想よりもはるかに早いペースで、いま、復興に向かっています。

大学も復興に向かっています。
一部の建物の損壊が大きいところをのぞき、実験室の立て直しに向かっています。
市街地のキャンパスではいち早く始まっていました。
東北大学の理学では、化学棟以外は、研究室の立て直しに向かえています。
工学は損壊した建物が多く、やや、難しい状況を伺っています。

津波災害に関しては、復興にはまだまだ遠い状況で、避難生活をどうしのぐか 
の段階のままです。
また、長神さんが心配され、心いためておられるのも、その通りだと思います。
社会としての備えも十分はなかったと思います。
ただ、備えるとして、巨大な堤防ですら無力であったことを考えると、
町の機能をどこに設置するかの見直しが必要です。
(すべてを高台にというわけにはいかない限り、なにを高台に設置し、どう緊 
急時の連絡体制を作るかです。)
これは、理学(ぎりぎり提案まで)も、工学も、社会科学も足りていなかった 
と思います。
貞観津波の件が、報道されておりますが、たしかにそうなのですが、
証拠不十分な段階であり、あと、3年、せめて1年、という声が聞こえてきています。

原発に関しては、私自身、知識が乏しすぎたと悔やんでいます。
今は、放射線測定結果を眺めているしかできない状況です。

私個人については、職場居室は新しい建物の低層階でしたので、ほぼ被害無しですし、
自宅も無事です(ガスはまだ復旧しませんが)。
近隣の子ども達からも「練習通りに(避難)できたよ。」との感想が返ってきました。
避難所では、理学もサイエンスコミュニケータとしても経験は役に立ちません 
でしたが、
体力では、それなりに貢献できたと思っています。
(避難所を少しでも快適にするお手伝いに集中できたことは、もっていた知識 
が役に立ったのかもしれませんが)
地域は地震災害のみですので、今、津波災害地域への支援にまわっています。
PTAが連絡網として機能している印象です。

もう一点、
東北と関東の違いは、帰宅難民率と計画停電です。
東京と仙台を行き来した知人からは、上記による、社会の緊張感の違いを聴か 
されました。
これは、ここにいる皆さんにも、意識して、情報を集めて、何らかの情報発信 
をしていただきたい気がしています。
立花さんの感想も、その辺りに起因するのではないかと推測しています。

横山さんからの提言、基礎科学の復旧にむけてですが、賛成です。
指摘されてみれば、たしかに、今、役割分担として、手薄間を感じます。
まだ、それを認めたばかりなので、具体案はまだもてません。

参考までに、東北大学理学研究科では、
29日火曜日、構成員全てにむけての災害復興説明会が開催されました。
冒頭、地震、物理(放射線)、気象、海洋の研究者がそれぞれの解説を行いました。
基本的には、どういう見方をしているか、という内容で(あえて具体的には書 
きません)、
未来予測でも提言でもありません。
この姿勢は、大切かと思いました。

以上、近況報告まで。いつの間にか長くなってしまいました。すみません。

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久利 美和 <kuri-m@mail.sci.tohoku.ac.jp>
東北大学大学院理学研究科・理学部
教育研究支援部アウトリーチ支援室
TEL : 022−795−6707
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