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Date: Sat, 02 Apr 2011 00:14:34 +0900
From: Kei KANO <kkano@icems.kyoto-u.ac.jp>
Subject: [scsj:00029] Re: [scicomsociety-adm:246] 	新年度のご挨拶(科学コミュニケーション研究会)
To: scicomsociety-adm@googlegroups.com, member@scicomsociety.jp
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横山先生、阿多先生、久利様、立花様、みなさま

京大・iCeMS・科学コミュニケーショングループの加納圭です。

2ヶ月間のオーストラリアでの在外研究を終え、つい先ほど日本に帰国しました。

震災の前後を海外で(しかも原発がない国で)暮らしておりましたので、日本に
近づくに
つれシリアスな状況であることを肌で実感してきました。

成田経由で伊丹に帰る予定だったのですが、色々と変更をされ、直前まで便が決
まることなく、最終的に香港経由で帰ることになりました。
そのシドニー → 香港便で隣に座っていた中国人の彼女が、
「日本が好きでこれまでにも何回も来ていたし、これからも行きたい」
と言いいながら機内でドネーションをしてくれていました、
「けどね、パパとママがもう日本には絶対行ってはいけないって言うの、残念だ
けどその意見には私も賛成」
と続けられた時に、あぁ、日本はそういう国になってしまったのだなとショック
というか何とも言えない気持ちになりました。
ドネーションのお礼にと、彼女には京都のあぶらとり紙と和歌山のせんべいを渡
して別れました。

実際、その後の香港 → 関空便はガラガラ。1人旅の人はもれなく、3列シートを
独り占めで寝られるぐらいです。

とりとめのない話ですいません。

まだ皆さんと危機感を共有できるまでは時間がかかるかもしれませんが、皆さん
がおっしゃられているように「できることから」
行っていきたいと思います。

横山先生がおっしゃられている「科学コミュニケーターへの批判」の中身につい
てはよく知りませんが、おそらく「科学コミュニケーション」
という言葉が意味するエリアが広すぎることによる言葉のズレではないかと思い
ます。ある側面だけで「科学コミュニケーター」の仕事を
とらえるのであれば、それ以外の側面で働いている「科学コミュニケーター」
は、「動いていない」と見なされるのでしょう。
これは、「科学コミュニケーター」を「専門家」という言葉に置き換えても、
もっと言えば「原発の専門家」という言葉に置き換えても同じこと
が言えるのではないかと思います。

オーストラリアで改めて感じたことは、「科学コミュニケーション」が取り扱う
範囲は非常に広く、多方面からなります。
これは否定的に捉えられるべきではなく、「一般化」を専門とする集団である以
上当たり前のことだと思っています。

しかしながら、オーストラリアもそうですが、科学コミュニケーションを専門に
扱っている人たちは日本ではまだまだ非常に少ないです。
オーストラリア中の科学コミュニケーション関係の有力者が集まる会議に出席し
てきましたが、それでも200名程度しかいません
(オーストラリアは人口少ないので仕方ないかもしれませんが)。このような小
さな集団で大きな成果をあげるには、「大きな目標」
を共有することが必要かと思います。そこが日本の科学コミュニケーションコ
ミュニティで欠けている部分の一つだと感じます。
オーストラリアの大きな目標は「イノベーションへの貢献」です。
日本の第4期に近い発想なので、僕にとっては理解しやすかったですし、議論も
しやすかったです。

この科学コミュニケーション研究会でもかまいません、別の組織や仲間内でもか
まいません、
ぜひ日本の科学コミュニケーション関係者にとっての「大きな目標」について議
論できればと思っています。

このような未曾有の震災を経験したからこその、実に日本的なものが出来て共有
できればと思います。

いつもながら駄文ですいません。またズレているようなら、色々とご指摘いただ
ければ幸いです。

本年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。

加納圭


-- 
加納圭
京都大学物質−細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)
特定拠点助教・博士(生命科学)
〒606-8501京都市左京区吉田牛ノ宮町
Tel: 075-753-9784
Fax: 075-753-9785
Email: kkano@icems.kyoto-u.ac.jp

Kei Kano, PhD
Assistant Professor
Institute for Integrated Cell-Material Sciences (iCeMS)
Kyoto University
Yoshida Ushinomiya-cho, Sakyo-ku, Kyoto 606-8501, Japan
Phone: +81-(0)75-753-9784
Fax: +81-(0)75-753-9785
Email: kkano@icems.kyoto-u.ac.jp