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Date: Fri, 23 Sep 2011 15:32:03 +0900
From: TAKANASHI Naohiro <naohiro.takanashi@emp.u-tokyo.ac.jp>
Subject: [scsj:00075] 第4回科学コミュニケーション研究会:招待講演概要
To: member@scicomsociety.jp
Message-Id: <4E7C27E3.4090908@emp.u-tokyo.ac.jp>
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みなさま

昨日のメールに引き続き、第4回科学コミュニケーション研究会の
招待講演の概要をお送りいたします。ご参考までに。

世話人
高梨

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科学コミュニケーションの過去・現在・未来 ─3.11以後を考える─
佐倉 統 (東京大学 情報学環・学際情報学府 教授)
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概要:科学と社会のコミュニケーションは、科学技術に二次的に付随するもので
はなく、科学という営みが本来必要とする活動である。つまり、「科学コミュニ
ケーションは科学の一部である」と考えたい。にもかかわらず、日本などで近年
になってようやく科学コミュニケーションの重要性が強調されるようになってき
たのは、科学技術の社会における重要性が相対的に増加したための帰結である。
科学と社会の距離が遠くなったからというよりも、むしろ科学と社会の距離が近
くなったがゆえに両者のコミュニケーションが必要とされるようになってきたの
だと考えられる。3.11大震災とそれに続く福島第一原発事故は、日本の科学技術
と社会の関係に大きな課題を突きつけた。何が問題で、どう対応していけば良い
のか、考えたい。
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アウトリーチ活動の評価について
大島 まり (東京大学 生産技術研究所 教授)
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概要:
科学技術は経済の基盤を支えるだけではなく、電気や車、携帯電話など様々な形
で私たちの日々の生活に浸透しています。一方、先鋭化、専門化している科学技
術が、私たちの生活にどのように生かされているのか、理解するのはなかなか難
しいです。このようなギャップを埋めるために、東京大学生産技術研究所では、
知の社会浸透ユニット(Knowledge Dissemination Unit)を通して、出張授業や
貸出教材などの様々なアウトリーチ活動を展開しています。本講演では、KDUの
アウトリーチ活動の紹介とともに、事前・事後・追跡アンケートなどを通したア
ウトリーチ活動の評価についてふれます。
東日本震災後、科学技術が社会にどのように捉えられ、判断され、受容されてい
くのか、科学技術の社会的意義が改めて問われるようになってきました。このよ
うな社会変化のなか、アウトリーチ活動の果たす役割を、皆様とともに考えてい
きたいと思います。
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「幸せ」を感じる脳
菊池 吉晃 (首都大学東京 大学院 人間健康科学研究科 教授)
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「幸せ」の神経基盤について、筆者らのこれまでの研究結果の中から考察してみ
た。人が幸せを感じる際の神経基盤については、「感動」、「母性愛」、「懐か
しさ」などに関する研究結果で共通して活動する前頭前野眼窩皮質(OFC:
orbitofrontal cortex))を中心とした報酬系が大きな役割を果たすことがわかっ
た。さらに「幸せ」を守るための神経基盤については、「自己肯定性の防御」、
「化粧と社会性」、「母性行動」などの研究結果から、前部帯状回(ACC:
anterior cingulate cortex)を中心とした警戒系が重要な役割を果たすことが示
された。以上の結果から、OFCとACCを中心とした報酬系と警戒系が「幸せ」の神
経基盤として重要であることが示唆された。
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国際開発や貧困削減の成果を測る:「あばたもえくぼ」の評価論
山形辰史 (ジェトロ・アジア経済研究所 教授)
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公的セクターの効率性が問題視されるようになり、公的セクター全般に成果主義
が適用されるようになってきている。国際協力のほとんどが公的セクター(国際
機関、政府機関、NGO)によってなされるので、国際協力の成果をどのようにし
て測るか、が課題となっている。「幸福度」は国際開発の成果指標として重要視
されている。幸福度を測るには、主観的評価を問うアプローチと、選択肢の多さ
(選択可能性の広さ)を客観的に測るアプローチがある。後者のアプローチが支
配的であるが、前者のアプローチへの注目も集まっている(ブータンのGross
NationalHappinessが有名)。客観指標も、GNPから人間開発指標(アマルティ
ア・センらが開発)へと深化している。
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科学と幸福測定
前野隆司 (慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授)
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まず、「科学は行うべきか?」についての哲学・倫理学的議論について概説す
る。次に、科学、好奇心、幸福の関係についての心理学分野における研究結果に
ついて述べる。さらに、近年、心理学や経済学の分野で行われてきた幸福研究の
全体像をレビューする。すなわち、幸福感や生活満足度に影響する様々な因子に
ついて述べる。最後に、幸福学の体系化・定量化に向けて講演者らが目指してい
る点について述べる。

-- 
Naohiro Takanashi, Ph.D.

Project Assistant Professor (Executive Management Program)
Institute of Industrial Science, The University of Tokyo
naohiro.takanashi@emp.u-tokyo.ac.jp
https://www.emp.u-tokyo.ac.jp/